「ほら、サイモン・カークってさぁ、下手ぢゃん。」・・・だぁとぉう〜?
− by Kinoshita −

その昔、そうですねぇ〜、それは1991〜2年頃の話です。
この蛮魔棲がロッカー / バンドマン御用達の雑誌「Player」のメンバー募集欄に、リズムセクションの募集を投稿していた頃のこと。この頃は、SUGAR MAMAというブリティッシュブルーズ系統のバンドでギターを弾いていましたが解散となり、Vocalの松浦氏と新しくハードロックバンドを立ち上げようとしてたんですな。後にTANGERINEとなるバンドです。オリジナル曲と、埋もれている名曲を独自にアレンジして演奏しよう、という2本立ての目的でした。当然、FREE、BAD COMPANY、HUMBLE PIE、WHITESNAKEなど、往年の名英国バンドを基盤とする旨を募集記事には書いていました。 取り敢えずドラムはSUGAR MAMA時代 に対バンで親しくなった、ある英国ロックフリークのドラマーがメンバーを探す間手伝ってくれましてね。
良いドラマーだったんですが、彼はスピード感とキレ味勝負のヒトでありアタクシ達とスタイルが違うのと、メジャーデビュー目指していたバンドに居たため、ヘルプでお願いした訳です。
程なくベーシストが決まりました。それは・・大塚教授(現Mr.JIMMY / TANGERINE)です。

そしてドラマー捜索無間地獄が始まりました。
「Player」見て、結構応募の問合せをもらったんですな。が、非常に気になったのはこの一言を吐くシト達が実に多いこと!「だってさぁ、サイモン・カークってヘタじゃん。」そして、こう続くのです・・・「やっぱポーカロがさぁ、ボンゾがさぁ、ペイスがさぁ、コージーがさぁ、ブラッフォードがさぁ、スティーヴ・ガットがさぁ・・・」何度こういうおシトの相手をしたことか・・・。バンドには入りたい、でもFREEは下手だからやりたくない、オレの目指しているのはもっと上のドラマーだと、こういうことなんでしょうね。んで、アタクシは必ずこう答えていたものです。「んぢゃ、そんな下手だと思うなら簡単でしょ? FREE LIVE と HUMBLE PI Eの SMOKIN' とZEP数曲で音合わせしてみましょう。あ、あとはBADLANDSね。」
しかぁ〜し!誰一人としてその下手クソなはずのサイモンのプレイを叩きこなせたシトはいらっしゃいませんでした。誰一人としてこの蛮魔棲が小学6年の時に聴いたスリルを思い出させてはくれませんでした。ライブテイクの All Right Now のイントロ一発聴けば、どんなもんだか大抵解ります。如何に音楽の表層だけを聴いているヒトが多いのか、音楽を技術上でのランク付けだけに終始して聴いているヒトが多いか、改めて見せられた思いでしたね。
ドラムキットは、2バスでもなきゃ、ボンゾのように26インチの大口径のバスドラで威圧するようなものでもなく、たった2個のタムとスネア、2枚のシンバル、小さなバスドラム。22インチかな?貧弱ですよ。またプレイでも手数の点から言ったら、前出のドラマー達と比べてサイモンはシンプルですよね、確かに。派手なシンコペーションなんかもないし、リズムもちょくちょくヨレます。とは言えR&Bとジャズの背景をちゃんと持ち、更に独特な空気を出せるドラマーです。最
小限のドラムキットから大きなうねりのビートと重量感、そして必要にして充分な、かっこいいフィルインを叩き出すサイモン。FREEのドラマーにとても代役は考えられない。
先日出たBAD COMPANYの2002年ライブDVDでグレン・ヒューズが語っています。「サイモンには何だって出来る。完璧だよ。FREEもBAD COMPANYも、サイモンの代わりはいないのさ。Two Thumb Upだよ!」
「下手ウマのコゾフ」礼賛